社会保険の意義・種類
社会保険は、わが国の社会保障制度(社会保険、公的扶助、児童手当、社会福祉、保健衛生)のなかでは中核的存在と位置づけられます。保険事故に対する経済的保障(保険給付)という防貧の機能を果たしています。
保険給付に必要な資金をあらかじめ制度加入者の拠出(保険料等)を中心として準備しておき、病気、負傷、身体の障害、死亡、老齢、失業等の保険事故が発生した場合、あらかじめ予定した保険給付を行うことにより、制度加入者(被保険者)やその家族(被扶養者)の生活が困窮に陥ることを防止しようとするものです。
わが国の社会保障制度には、被保険者等となるべき者の態様または給付の対象となる保険事故等が異なる制度があります。また、医療保険と密接に関連する「老人保健制度」「介護保険制度」も含まれます。
年金保険については、国民年金が全国民を対象として給付を行い、事務所に使用されている者(被用者)に対しては厚生年金保険・共済組合等が国民年金の給付に上乗せして給付を行うという、いわゆる二階建てのしくみとなっています。
なお、健康保険、厚生年金保険、労働者災害補償保険及び雇用保険は、一般職域の被用者を対象とすることから「一般職域保険」と、また、船員保険は船員を、共済組合等は公務員または一定職域の教職員を対象とすることから「特殊職域保険」とも呼ばれています。
各制度の目的
健康保険制度
健康保険は、被用者の医療保険の中心的な制度です。一般職域に常時使用される労働者を被保険者とし、労働者の業務外の事由による疾病・負傷・死亡または出産、その被扶養者の疾病・負傷・死亡・出産に関して保険給付を行うことによって、国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的としています。
国民年金制度
国民年金は、老齢・障害・死亡を保険事故として、被保険者、被保険者であった者およびその遺族に対し必要な給付(基礎年金等)を行い、被保険者等の生活の安定と向上に寄与することを目的としています。
この制度は、全国民共通の制度であり、被用者、自営業者の区別なく、原則として日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者は、すべて被保険者とされます。
厚生年金制度
厚生年金保険は、一般職域の労働者及び船舶所有者に使用される船員(原則として70歳未満)を被保険者とし、その老齢・障害・死亡を保険事故として、基礎年金に上乗せして報酬比例の年金を支給し、労働者、船員およびその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的としています。
労災保険制度
労災保険は、業務上の事由または通勤による労働者の負傷・疾病・障害・死亡を保険事故とし、これらに対して保険給付を行い、あわせて、労働者の福祉に必要なサービスを行うことによって、労働者の福祉の増進に寄与することを目的としています。
労働者の業務災害については、労働基準法により使用者に補償責任が課されていますが、労災保険は、この使用者責任を保険の方法によって肩代わりするものです。したがって、保険料は使用者だけの負担とされる点が特徴です。
なお、労災保険では、他の保険給付として「二時健康診断等給付」を行っています。
なお、老齢・職域外の事由による障害・死亡に対する年金給付は、国民年金・厚生年金保険において行われます。この場合、船員保険が適用される船舶、船舶所有者および船員は、それぞれ、厚生年金保険の適用事業所、事業主および被保険者とされますが、届出等は、船員保険法令の定めに基づいて行います。
健康保険等の被用者医療保険の被保険者・組合員およびその被扶養者は、その資格を喪失すると住所地の市町村が行う国民健康保険の被保険者となりますが、このうち一定の者については「退職被保険者およびその被扶養者」とされます。これが、「退職者医療制度」といわれるものです。
この制度は、a.被用者年金各法の老齢・退職を支給事由とする年金給付を受けられる者で、被用者年金の被保険者(組合員)期間が20年以上または40歳以降10年以上あるもの、b.これらの者の直系尊属、配偶者、子、孫、弟妹等で被用者医療保険の被扶養者とみなされる者を対象としています。
なお、老人保健から医療等の給付が行われる場合には、医療保険各制度の療養の給付等は行われません。
この制度は、児童を養育している者の養育費負担の軽減を図るとともに、次代の社会を担う児童の健全な育成と資質の向上に資することを目的としています。この目的にそって、児童手当は、被用者、自営業者の区別なく、3歳未満の子を有する世帯に支給されます。現在は、3歳以上小学校終了前の児童を対象に、特例支給も行われています。